インドには「インドの山岳鉄道群」として登録されている世界遺産の鉄道が3路線あります。「ダージリン・ヒマラヤ鉄道」「ニルギリ山岳鉄道」「カルカ・シムラー鉄道」の3つです。今回のアジアバックパッカートラベルではインド北部のヒマチャル・プラデーシュ州の州都シムラーからハリヤーナー州カルカを結ぶ「カルカ・シムラー鉄道」を紹介したいと思います。
カルカ・シムラー鉄道とは?
イギリス統治時代の1865年に標高2000mに位置するシムラーはインド帝国の「夏の首都」として定められ、夏の間はコルカタからシムラーに首都機能が移転されていました。その中で山岳地帯のシムラーと低地を結ぶ交通機関としてとして、1903年にカルカ・シムラー鉄道が開通します。イギリス統治時代から100年以上の歴史を持ちダージリン・ヒマラヤ鉄道やニルギリ山岳鉄道と共にインドを代表する山岳鉄道であり、2008年にユネスコの世界文化遺産「インドの山岳鉄道群」として登録されています。
線路の幅(軌間)がナロー・ゲージ(狭軌)762mmとインド標準の広軌1676mmの半分以下で車両も小型のために「トイ・トレイン」とも呼ばれています。参考までに日本は新幹線が標準軌1435mm、JR在来線が狭軌1067mmを採用しておりますので、762mmのカルカ・シムラー鉄道がいかに小さいかというのが何となく想像できるかと思います。
運営 | Northern Railway |
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距離 | 96.6km |
軌間 | 762mm |
駅 | 18 |
トンネル | 103 |
橋 | 864 |
最大勾配 | 30.3‰ |
両端の駅の標高差 | 1420m |
開業年 | 1903 |
旅程
シムラー駅 2076m 出発
カルカ駅 656m 到着
*ルートは実際にGPSで収集したデータを使用しています。
カルカ・シムラー鉄道(シムラー→カルカ).gpx
カルカ・シムラー鉄道(シムラー→カルカ).kml
世界遺産カルカ・シムラー鉄道
、標高2076mのシムラー駅にやってきました。ホームにはほとんど人がおらず静かです。
まずはシムラー駅の駅名標を確認します。ヒンディー語と英語表記になっております。
カルカからの列車が到着したので跨線橋から撮影です。
きっぷ売り場でカルカまでのきっぷを購入します。今回購入するのは10:40発、カルカ行きHIMALYAN QUEENの2等席のきっぷです。シムラーからカルカまでの運賃は50ルピー(80円)になります。HIMALYAN QUEENのきっぷには他にも予約販売しているFirst Class (FC)とAC Chair Car (CC)の2種類があります。予約販売しているきっぷは観光客向けで高額なのですが人気があり当日購入は困難です。私が購入したきっぷは2等席のきっぷの中でも予約不要・当日販売の「II」になり、簡単に言えば地元民向けのきっぷになります。
列車 | HIMALYAN QUEEN |
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発車駅 | シムラー |
発車時刻 | 10:40 |
到着駅 | カルカ |
到着時刻 | 16:10 |
所要時間 | 5時間半 |
座席 | 2等席 |
運賃 | 50ルピー(80円) |
カルカ行きのHIMALYAN QUEENが入線してきました。
、乗車します。座席は2列+2列ですがナローゲージの車両なのでかなり狭めです。今回の座席は一番安い2等席で撮影時は空いていましたが発車前になると満席で私以外は全員インド人というローカル色全開の鉄道となりました。
シムラーは野生の猿が多く生息しておりシムラー駅にも出没しています。
、標高2076mのシムラー駅を発車します。96.6kmの区間にトンネル103箇所、橋864箇所があり、最大勾配30.3‰の山岳区間を走ります。標高656mの終点カルカ駅との高低差1420mになります。列車は山岳鉄道らしく右へ左へと急カーブを抜けてトンネルを通り抜けていきます。
カルカ・シムラー鉄道は駅が全部で18駅あります。終点のカルカ駅まで途中駅が16駅あり、途中駅で地元の人達が乗車してきます。
カルカからの列車とすれ違います。カルカ・シムラー鉄道は単線での途中駅で対向する列車との待ち合わせをしたります。
車内の混雑が一段落してきましたが相変わらず座れない乗客がいる状態が続きます。
山岳鉄道らしく急カーブが多いので、ちょうどよい撮影ポイントも多いです。車窓からの撮影はシムラー発の列車は進行方向左側、カルカ発は進行方向右側の席が外の風景やカーブでの列車の撮影に適しています。反対側に座ってしまうとほとんどが山の斜面を見ることになってしまいます。
カルカ・シムラー鉄道では走行中に地元の乗客が乗り降りしたりする光景を目にすることが出来ます。こちらは荷物を投げて飛び降りる所で最初に荷物を投げます。
飛び降ります。
着地。
着地成功です。この後、荷物を回収していました。日本で走行中に飛び降りたり乗ったりするのはあり得ませんが、インドではOKなようです。
走行中に乗降口から身を乗り出すのもインドではOKなようです。
カルカ・シムラー鉄道の大小864箇所ある橋の中には、このように立派なアーチ状の橋もあります。
山岳区間を走る中でたまに町の近くを通り開けた景色が見られたりもします。
途中駅でシムラー行きの列車が列車交換のために停車しています。
、定刻通りにカルカ駅に到着、シムラーからカルカまで5時間半の乗り鉄でした。インドの鉄道では列車遅延が日常茶飯事ですので定刻通りに到着というのはかなり優秀です。日本では体験できない世界遺産の山岳鉄道の旅でした。