インド北部のヒマチャル・プラデーシュ州東部スピティ地方には「月の湖」という意味を持つチャンドラ・タールと呼ばれる湖があり、ラムサール条約にも登録され保護された神秘の湖です。今回のアジアバックパッカートラベルではカザから標高4590mの峠のクンズム・ラまで夏の間だけ運行されるローカルバスで移動して、峠からチャンドラ・タールまでトレッキングしましたので紹介したいと思います。
4日目の旅程
カザ(Kaza)3600m 出発
Losar / Lossar チェックポスト 4100m
クンズム・ラ(Kunzum La)4590m
チャンドラ・タール キャンプ村 4166m
チャンドラ・タール(Chandra Taal)4290m
チャンドラ・タール キャンプ村 4166m 宿泊
*ルートは実際にGPSで収集したデータを使用しています。
カザ→チャンドラ・タール.gpx
カザ→チャンドラ・タール.kml
カザから月の湖チャンドラ・タールを目指す
スピティ地方カザからラムサール条約登録地である湖チャンドラ・タールまでバスと徒歩で向かいます。カザ(Kaza)からはマナリ(Manali)経由クル(Kulu)行きのバスに乗車して途中の峠のクンズムラ(Kunzum La)4590mで下車、約10kmのトレッキングコースを歩いてチャンドラ・タール(Chandra Taal)4290mへ向かいます。
、起床して出発準備を整えます。前日に早朝4時にチェックアウトする事は伝えてあり勝手にチェックアウトします。野良犬に吠えられながらオールド・カザ地区のバスターミナルに向かいます。
カザ~クンズム・ラ(ローカルバス)
、標高3600mのカザ・バスターミナルにやってきました。まだ夜明けまで真っ暗ですがバスターミナルにはマナリ方面へ行く大勢の乗客の姿が見られます。これは完全に座れない人数の地元客がいます。04:30発、マナリ(Manali)経由クル(Kulu)行きのバスに乗車しますが、マナリ、クル行きの乗客のみということで途中までの地元客が降ろされます。
当然ながら降ろされる地元客と乗務員との間で揉めます。乗務員と地元客が口論している中で私も降ろされるかなと思っていたらマナリ行きと思われたようで降ろされずに済みます。結局は途中までの地元客はタクシーのドライバーさんが登場して、そちらへ流れます。タクシー組合が漁夫の利を得る形で口論は収まります。こんな早朝に何故タクシーが都合よく登場するのでしょうか?バス会社とタクシー組合で談合とかやっているような。
座れないと思っていたら席が空いており乗務員さんに指示され座席を確保します。途中下車なのですが最悪はマナリまでのチケット購入でクンズム・ラ下車という事にします。
、乗務員と地元客の口論の影響で5分遅れでクル行きのバスが出発します。降ろされずに座席を確保した状態でクンズム・ラへ向かいます。カザからクンズム・ラまでの運賃は159ルピーですが釣り銭が出ないので実際の支払い金額は160ルピーになります。隣の地元客はクルまでで431ルピーでした。
カザの町を出てスピティ川の橋を渡ろうとしますが、バスが橋に接触します。橋は大型車がギリギリ通れる幅で夜明け前は真っ暗ですので難易度が高いです。何度か切り返してようやくスピティ川を渡ります。
カザでは途中までの地元客を乗車拒否していましたが、カザを出てからは途中の村で地元客を乗せたり降ろしたりしていました。やはりバス会社とタクシー組合が繋がっているという事でしょうか?
夜が明けて未舗装の悪路を西へと進みますが道幅が狭く落ちたら谷底というような場所をいくつか通ります。
、標高4090mのロサル村(Losar / Lossar)に到着、朝食休憩になります。
カザの橋で接触した部分が破損しており応急処置がされます。
、ロサル発カザ行きのバスがやってきました。ロサルからカザまではバスが朝に1便あります。
ロサル村では携帯電話はBSNL(Cell One)のGSMのみ利用可能です。Airtelなど大手3社は使用不可、代わりに日本のドコモのSIMカードはBSNL(Cell One)のGSMで国際ローミングできて通話可能です。
、バスが出発して村外れのチェックポストで台帳にパスポート情報を記入して通過手続きをします。今回の外国人は私と欧米人の2人でした。4分ほどで手続きを終えて出発します。
標高4590mの峠クンズム・ラ
、標高4590mの峠クンズム・ラ(Kunzum La)に到着です。ここでバスを降りてトレッキングコースを歩いてチャンドラ・タール(Chandra Taal)へ向かいます。まずはチャンドラ・タールまでのトレッキングコースのスタート地点になるクンズム・ラで安全祈願です。チベット仏教の仏塔チョルテンが並んでおりバスの乗務員や乗客も安全祈願しております。
、バスがマナリ、クルに向けて出発していきます。
クンズム・ラはタグラン・ラやチャン・ラのように峠の記念碑はありませんが標高は確認できます。ヒンディー語表記ですが標高4590mの表記があります。
チャンドラ・タールの保護区に近いので、このように峠には注意標識があります。
こちらは右奥の建物が峠のトイレ、左の建物が峠の管理人さんの家です。このクンズム・ラには人が住んでおり峠にあるチョルテンを管理しています。さすがに冬は雪で閉ざされる峠ですので夏限定だと思いますが、このような秘境に人が住んでいるのには驚きです。トイレの右横がチャンドラ・タールに続くトレッキングルートになります。
クンズム・ラ~チャンドラ・タール(トレッキング)
、さて、私もクンズム・ラからチャンドラ・タールに向けてトレッキング開始です。今回の荷物の総重量は25kg超えです。8月にラダック地方でシャム・トレッキングに27kgの荷物で挑戦した時に、トレッキングは軽装、最小限の荷物という教訓を得たのですが、また荷物を全部担いで今回も重量27kgです。
こちらは峠にあるチャンドラ・タールの説明です。湖の周囲2kmではキャンプなどの宿泊は禁止ということですので、湖の手前にいくつかキャンプ村などの宿泊施設があるようなので、まずはそこを目指します。
MAPS.MEで確認するとクンズム・ラから湖のチャンドラ・タールまで距離は約10km、高低差426mとなっています。現在地はクンズム・ラにおりますのでトレッキングコースの序盤と後半に上り坂がありますが、全体的には下り坂のトレッキングコースとなります。
Google Mapsだと宿泊施設はいくつか表示されていますがトレッキングコースは掲載されておらず、車道のルートのみ表示されていますのでGoogle Mapsの出番は少ないようです。コース状況にもよりますが昼までにキャンプ村到着予定です。
トレッキングコースは整備されていませんが人が通ったのがわかるので何とかなりそうです。
チベット仏教の祈祷旗タルチョが見えてきました。どうやら峠のようです。タルチョを目指した歩いていきます。
、標高4665mの峠に到着、峠の名前は不明ですが多くのチベット仏教の祈祷旗タルチョがはためいています。
峠は風が強く吹いておりタルチョが飛ばされそうなくらいの勢いで力強くはためいています。
絶景を見ながら少し休憩します。
峠からは遠くにチャンドラ・タールのツーリストキャンプが見えます。それと渓谷を流れるチャンドラ川(シュナブ川)も見えます。
宿泊地のツーリストキャンプが見えましたので、これなら今回のトレッキングは意外と楽かもしれません。
、峠を出発してトレッキングコースを歩いていきます。周辺は標高5000以上の山々があり9月上旬でも雪が残っています。これだと年間通して雪が溶け切らないのでしょうから雪というより氷河かもしれません。
、標高4679mの峠に到着、ここで少し休憩です。峠と言っても緩やかな坂で周囲は草がまばらに生えているだけです。トレッキングコースは人が通ったとわかりますが、ほとんど獣道です。
、峠を出発してトレッキングコースを歩いていきます。
、標高4687mの峠に到着、ここではインド国旗がはためいています。
インド国旗があるということは人が通っているということになります。周囲の絶景を見ながらチャンドラ・タールまでのルートを確認しておきます。
渓谷を流れるチャンドラ川の絶景を見ながら進んでいきます。
、標高4400mの小川の流れる地点で昼食休憩にします。
石が積まれている場所があるのでキャンプ村や放牧地になっているようです。
、休憩を終えて出発します。
、遠くにチャンドラ・タールが見えてきました。
、チャンドラ・タールのキャンプ村が見えてきました。キャンプ村まで直線距離で約700mの距離なのですが、間にチャンドラ・タールからの川が流れる谷があり行く手を阻んでいます。現在地とキャンプ村の高低差は約200m、周辺にはショートカットできる道などありません。
キャンプ村にはいくつものテントが並んでおり宿泊は何とかなりそうです。この時はまだ知りませんでしたが、このキャンプ村にチャンドラ・タールのチェックポストがあります。
谷を挟んでトレッキングコースと並行してチャンドラ・タールの駐車場に続く車道が見えます。
先程のキャンプ村が見えた所からチャンドラ・タール駐車場の2.5kmの区間が今回のトレッキングコース最大の難所となります。難所を抜けると川を渡れるポイントがあり駐車場が見えてきます。
、標高4290mのチャンドラ・タールの駐車場に到着、クンズム・ラからチャンドラ・タールの駐車場まで所要時間4時間45分の道のりでした。ここから約1km北上すればチャンドラ・タール、約2km南下すればツーリストキャンプです。
このままトレッキングのゴール地点になるチャンドラ・タールを目指すか、ツーリストキャンプを目指すか考えます。先に寝床を確保して重い荷物をおいて身軽にした方が良いと判断してツーリストキャンプを目指します。
、標高4166mのチェックポストに到着、車で来る観光客を想定してチェックポストが設置されているので、保護区域のチャンドラ・タール側から来たトレッカーの私は珍しいようです。すでに保護区域の中にいたのですが台帳にパスポート情報を記入して手続き終了、これでツーリストキャンプで宿泊場所を探せます。クンズム・ラからチャンドラ・タールのチェックポストまで所要時間5時間半の道のりでした。
宿探しはチェックポストの向かいにあったツーリストキャンプでテントの料金を訊いてみたら共用トイレの2人テントが500ルピー(800円)、トイレ付き2人テントが800ルピー(1280円)で、両方とも朝夕食付です。コンセントは無く、太陽光パネルで太陽の出ている間だけバッテリーのあるテントで充電になります。照明は集中管理になっており夕方に一斉に点いて、バッテリーの残量により不定期で一斉に消える方式です。
1000~1500ルピーを想定していたので予想外に安いです。インターネット無し、シャワー無し、コンセント無しとベースキャンプ仕様で不便ですので安いようです。今回は500ルピーの安いテントに宿泊します。トイレは山のベースキャンプにあるようなタイプです。このツーリストキャンプ自体が山のベースキャンプみたいな物ですね。
、チャンドラ・タールに向けて出発します。
月の湖チャンドラ・タール
、標高4290mトレッキングのゴール地点になるチャンドラ・タールに到着です。パンゴン・ツオのような青い湖ですが、「月の湖」と呼ばれる割にはインパクトに欠けます。この時はまだ分かっていませんが、翌朝再訪した時にチャンドラ・タールの絶景を目にすることになります。
チャンドラ・タールとは?
チャンドラ・タールより西のチャンドラ川の渓谷の絶景の方に目が奪われます。まさに雄大な大自然です。
チャンドラ・タールの湖畔に降りてみます。水は澄んでおり水草がよく見えます。
観光客は湖の南岸に集中しており、少し北へ歩くと誰もおりません。観光客は湖で記念撮影をしたら帰ってしまうようで湖一周のトレッキングはしないようです。
夕方で時間も遅いので今日はチャンドラ・タールの南岸だけにして明日の湖一周の計画を立てます。
、チャンドラ・タールを離れます。
、ツーリストキャンプに戻ってきました。日が沈むと一気に気温が下がり冷え込んできます。夕食の準備が始まりますが、テントの中ではストーブが活躍中です。インドでもチャンドラ・タールは9月上旬でもストーブ必須です。
、夕食にダル・Mix Veg・ライスを頂きます。1日で15km以上歩いて空腹状態ですのでライス2回お代わりして満腹です。
食後は星空撮影をしますが標高4100mのツーリストキャンプはかなり冷え込んでいます。チャンドラ・タールまで出向いて星空撮影を考えましたが寒さとツーリストキャンプの外は真っ暗で危険なのでやめておきます。この辺りは雪豹の生息地にもなっているので出くわすと餌食になってしまいますので、ツーリストキャンプ周辺にとどめておきます。
雲が無く晴れているので天の川銀河が肉眼でもぼんやりと見えておりデジカメで露光時間30秒にすれば、天の川銀河がしっかりと写っております。
項目 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
宿泊費 | 1000ルピー | – |
バス | 160ルピー | カザ→クンズム・ラ |
合計 | 1160ルピー | 1ルピー≒1.6円 円換算:1856円 |