台湾東部の花蓮には台湾有数の観光地タロコ渓谷があります。タロコ渓谷の中には入山申請が必要な登山ルートが10以上あります。今回のアジアバックパッカートラベルでは入山申請の必要なルートで一番難易度の低い錐麓古道をハイキングツアーで訪れましたので紹介したいと思います。
錐麓古道について
錐麓古道はタロコ渓谷の燕子口~慈母亭(全長10.3km)の登山ルートです。元々はタロコ族が集落間を行き来する道であり、台湾東部のタロコ渓谷のから合歓山を越えて台湾西部の霧社、台中方面へ抜ける全長約70kmの合歓越嶺古道の一部になっていました。
1895年の日清戦争により台湾が日本へ割譲され台湾総督府による理蕃政策により、台湾総督府とタロコ族の間で衝突が発生していきます。1914年に発生したタロコ族による武装蜂起はタロコ戦役と呼ばれ、台湾総督の佐久間左馬太が率いる日本軍との戦闘により鎮圧されます。
1917年にタロコ族に対する統治強化の為に合歓越嶺古道を改修して約4km毎に駐在所を設置していきます。錐麓古道の区間は大砲の輸送が可能な幅1.5mの道を作りますが、工事は原住民の徴用により行われ断崖の上からロープで作業者を吊り下げ爆薬を仕掛けて道を建設していきます。この区間が巴達岡駐在所 – 断崖駐在所にある錐麓断崖で大変危険な工事となりました。
その後1933年には全行程約4日で台湾を横断する登山道「合歓越連絡道路」として観光開発が進んでいきます。第二次世界大戦の終戦により日本の台湾統治が終了し中国大陸から蒋介石率いる国民党政府が台湾に移ってくると錐麓古道は安全性の問題により封鎖されました。
長年封鎖されていた錐麓古道ですが、1986年に太魯閣国家公園が設立されタロコ渓谷の整備が進む中で日本統治時代の遺跡が残る錐麓古道の修復も進められます。そして、2004年に燕子口 – 巴達岡駐在所 – 断崖駐在所の3.1kmが登山道として開放されました。
錐麓古道の出入口
錐麓古道(東側)の入口は燕子口になります。
錐麓古道(西側)の入口は慈母橋近くの慈母亭にあります。
しかし、慈母亭 10.3km – 断崖駐在所 3.1kmは洪水で道が流されており慈母亭側の入口は閉鎖されています。
錐麓古道は許可証が必要
錐麓古道は燕子口 0km – 断崖駐在所 3.1kmが開放されており入園料200台湾ドル(720円)、平日96人、土日祝日156人の入園に限定されています。入園申請は下記の「臺灣國家公園入園入山線上申請服務網」から行います。個人でも申請可能ですが、緊急時の連絡先が必要で実際に確認の電話がかかってきたという話を聞いており、中国語、英語が必須なので、大人しく旅行会社に手配してもらうのが良いです。
KKdayで錐麓古道ツアーを申し込む
今回はKKdayの「【花蓮出発】台湾・太魯閣(タロコ)国家公園 錐麓古道ハイキング1日ツアー」に申し込みました。費用はツアー代金1199台湾ドルと錐麓古道の入園料200台湾ドルです。KKdayでツアーを申し込みましたが、実際にツアーの手配をしてくれたのが花蓮の旅行会社「Uniquefun 由你玩」でした。
申込時の入力内容で注意しておきたいのが3箇所あり、1箇所目は「送迎情報」です。「送迎情報」に「下車地点」とあるのですが、これは集合場所と解散場所のことです。とりあえず無難なのは花蓮駅にしておいた方が良いです。英語で記入するようにとあるのですが台湾の旅行会社が内容を確認しているので下記のように中国語でOKです。下記は花蓮駅東口の住所です。東口は駅正面の賑やかな方の出入口です。
(記入例)
花蓮火車站前站(東出口) 花蓮縣花蓮市國聯一路100號
2箇所目は「旅行中の連絡先」です。
私は申込時に「通信アプリ」欄を「なし」にしていたのですが、後で現地花蓮の旅行会社からからLINEかWhatsAppのIDを送るようにメッセージが来ました。予めIDを知らせておいたほうが良いです。
3箇所目は「記入欄 (記入事項)」です。
緊急連絡先が必要ということなので、予めに入力しておいた方が良いです。下記のような感じで自宅にいる家族を緊急連絡先にしておくと良いでしょう。
(例)
你好。我通知留守人資料。留守人資料
姓名:安倍 晋三
電話號碼:+81-3-5253-2111
聯絡地址:日本國東京都千代田區永田町1-6-1
申込後は花蓮の旅行会社「Uniquefun 由你玩」と英語もしくは中国語でLINEでのやり取りになりました。私は中国語OKのA女史の手助けで中国語でのやり取りになりました。ちょうど中国の武漢肺炎が猛威を振るっていた時期で日本から台湾への入国者に入国制限が課せられており、質問のやり取りがありました。
LINEで「日本から台湾入国」「新型コロナウイルス(武漢肺炎)患者との濃厚接触無し」などの説明や台湾の入国スタンプを送り入国日の確認までやりました。
ツアー前日に集合場所、集合時間などや当日必ずマスク着用のお知らせがありました。
ちなみに錐麓古道の入園申請の状況は臺灣國家公園入園入山線上申請服務網で確認できるようになっています。ツアー申し込み翌日には入園申請が出され審査待ちになりました。
私の場合は申請から4日後に錐麓古道の入園許可が下りました。申請状況を見ると外国人がそこそこいるようです。
錐麓古道ハイキングツアー
06:20、花蓮駅にやって来ました。集合時間は06:25という事で丁度良い時間です。
06:25、時間通りにLINEで知らされていたナンバーの車がやって来て無事にガイドのTOMIさんと合流します。駅前集合ということなのでTOMIさんが電話で連絡を取り他の参加者も無事に合流して出発します。今回の参加者は全部で5人、台湾、インドネシア、日本のグループになり、TOMIさんが中国語と英語でのガイドします。中国の新型コロナウイルス武漢肺炎が猛威を振るっていた時期なので全員マスク着用でツアー出発です。
07:00、タロコ渓谷の手前にあるセブン-イレブンで喫煙とトイレ休憩です。タロコ渓谷は太魯閣国家公園の中にあり指定場所以外は禁煙なので、ここが最後の一服です。
07:20、錐麓古道の入口になる燕子口に到着します。ここは花蓮駅と天祥を結ぶ台湾好行バスが停車する燕子口バス停のすぐ近くです。ここからは全員マスク無しになりました。車内は密閉空間なのでマスクは当たり前なのはわかりますが、外に出たらマスク無しはどうなのかという疑問もありますが、ここからはマスク無しです。
ここでTOMIさんが太魯閣國家公園管理處発行の錐麓古道の入園許可証を提出、私はパスポートを提出し、錐麓古道の入園料200台湾ドルを支払います。あとは誓約書に署名をします。
入園者の照合が終わるとパスポートが返却され、錐麓古道入園券を受け取ります。
ここが錐麓古道の入口になります。
職員さんが入口を開けてくれて錐麓古道へ入っていきます。
まずは錐麓吊橋を渡ります。眼下には立霧溪が流れています。
錐麓吊橋から少し下流に見える吊橋が2019年10月に完成した山月吊橋です。2020年下半期に一般開放されるタロコ渓谷の新観光地で近くの布洛湾から山月吊橋へ行けるようになります。
錐麓古道をTOMIさんの先導で進んでいきます。最初に目指すのは巴達岡の巴達岡駐在所です。
08:05、巴達岡に到着です。道の両端にある柱が集落の入口になります。
巴達岡には巴達岡駐在所が置かれていました。日本統治時代には駐在所の他に招待所や倶楽部がありタロコから霧社、台中方面への休息地点になっていました。
08:25、巴達岡二号橋を渡ります。
吊橋からは青空のタロコ渓谷が広がっています。
08:40、燕子口から1.7km、断崖駐在所まで1.4kmの地点まで来ました。ちょうど中間地点付近までやって来ました。
08:57、木々の間から遠くに山月吊橋が見えます。燕子口では見上げていた吊橋が、ここでは遥か下に見えます。
09:22、トンネルを通過します。
09:29、橋を渡ります。
09:30、錐麓断崖に入ります。ここからは落石に備えてヘルメット着用になります。
錐麓断崖は全長約500m、道幅は狭く落石の発生する区間になります。過去には錐麓断崖からの転落事故が発生したこともあります。
錐麓断崖の細い道を進んでいきます。眼下には絶景が広がっていますが歩いている最中は見ないほうが良いです。
崖下は見なくても山の方を見れば、こちらにもタロコ渓谷の絶景が広がっております。
ここ数日の花蓮の天気は決して良くはなく曇りがちでしたが、この日は晴れており錐麓断崖の絶景と高さをしっかりと体験できています。
錐麓断崖には日本人がトンネルを開削した記念碑として岩に刻んだ文字が残っています。
トンネルには石像が残っています。
トンネルを歩いていきます。
トンネルを抜けて錐麓断崖の撮影スポットで記念撮影です。
道幅が狭いので記念撮影は慎重に行われます。
眼下にはタロコ渓谷から台中まで抜ける中横公路(台8線)が小さく見えます。
足元の草と眼下の中横公路(台8線)を比較すればどれくらい高低差があるか分かると思います。
10:11、燕子口から3.1kmの地点まで来ました。
ここが終点の断崖駐在所です。駐在所と言っても跡地でとハイキングコースの休憩地点になります。
断崖駐在所から先は道が流されてなくなっている部分があり、ここで引き返すことになります。この折り返し地点が目隠しになっているので緊急のトイレになっています。トイレのない錐麓古道で我慢できなくなった人たちが、この裏で緊急の用足しをするそうで右側に見えるスコップで穴を掘ります。
この断崖駐在所の折り返し地点から50mほど奥に記念碑が残されています。私一人できた場合は引き返していましたがガイドのTOMIさんが案内してくれました。石碑には「故花蓮港廳巡査班長持舘代五郎之碑」と刻まれており殉職者の石碑のようです。花蓮港庁は1909-1945に置かれていた行政機関で、この時代の殉職者というのが分かります。
10:30、断崖駐在所から燕子口へ引き返します。
20分ほど前までは晴れていたタロコ渓谷ですが急に雲が出てきました。山の天気は変わりやすいです。
11:45、錐麓吊橋に戻ってきました。ここで最後の記念撮影です。
11:50、錐麓古道の出入口「燕子口」に到着、出口で名簿確認があり入山者が無事に帰ってきたか確認されます。名簿の確認が終わり無事に錐麓古道のハイキング終了です。